催眠法を用いた実験による共感覚(色聴)現象の再現


長谷川明弘(2011)

催眠法を用いた実験による共感覚(色聴)現象の再現

日本催眠医学心理学会第57回学術大会.プログラム・抄録集,p.34:9月11日 東京・駒澤大学

 

  • 概要:共感覚は、一つの様相の感覚が別の様相の感覚を引き起こすことを指している。音に色が付いて聞こえるサウンド・カラー共感覚(sound-color synesthesia:色聴)が知られている。
    • 本研究は、催眠法を用いて共感覚(色聴)現象を実験的に引き起こすことが可能か否かを検討することを目的とした。
    • 実験は6名の実験参加者に対して、催眠条件(実験条件)と覚醒条件(統制条件)の2条件を個人内要因での比較を行った。また催眠実施者は、日本催眠医学心理学会が認定する認定催眠士の資格を有する心理学の専門家であった。
    • 催眠感受性の測定には、スタンフォード催眠感受性スケールを用いた。スタンフォード催眠感受性スケールが、8点以上の催眠感受性の高い参加者は3名であった。高得点者は催眠条件において音刺激から色を感じる反応(色聴)があらわれた。催眠感受性が低くなるにつれて参加者は色よりも濃淡を感じる傾向を認めた。また感受性得点が0点の参加者やいずれの参加者でも覚醒条件では、色聴現象が現れなかった。
    • 内省報告では、色覚を認めた際に「音が消えると画面上に見えていたものが消えた」、複音の場合に「楕円形が二つ同時に提示されて動画みたいに動いた」という報告があった。
    • 本実験からは、催眠感受性の高さと色聴を催眠法によって実験的に再現する現象との間には、関連を有する可能性が示唆された。なお参加者数が十分とはいえないため、さらなる検証が求められよう。
  • キーワード:共感覚    色聴    催眠感受性尺度
  • 付記:本研究は、金沢工業大学情報学部心理情報学科平成22年度卒業生である光保克敏さんとその指導教員である近江政雄先生との共同研究として実施した。データの公表に際し、お二人からご理解を賜りましたことに謝意を表します。