長谷川明弘・武居将志・大工原将貴 (2020)
年齢退行を用いて潜在化された記憶と言語を想起する試み
日本催眠医学心理学会第66回大会オンライン大会,プログラム・抄録集,pp.25-26:11月28日
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概要:記憶と言語は心理学で長く取り上げられてきたテーマである。今回は、催眠法による年齢退行によって過去に獲得していた言語ならびに記憶の想起がどの程度できるか検討した。実験参加者はA(10歳代後半)高校生であった。スタンフォード催眠感受性尺度の得点は2回ともに6点(中程度)となった。実験1回目では視覚面の記憶だけが想起され、実験2回目では視覚並びに音声の刺激を手がかりとして記憶想起がどの程度生じるのか確認したものの、1回目同様に視覚面の記憶想起だけとなった。これらからAが視覚優位であるためと考えられた。言語については、想起だけでなく音声刺激の意味をほとんど思い出せなかった。Fromm(1970)が年齢退行によって幼少期の4歳まで用いていて現在使っていない言語を対象者が話したという研究報告した中では、その催眠感受性が12点と満点と高得点になっていた。今回は6点と中等度であり催眠感受性の高低が影響している可能性が伺えた。言語は、視覚と聴覚との連合で獲得されると考えられ、これらから総合的に言語の想起が行われなかったと考えた。今回のような研究が調べたかぎりあまり確認できず今後の追試が期待される。
- キーワード:年齢退行、潜在記憶、潜在化言語