長谷川明弘
ナラティブ・アプローチに基づく心理支援〔第7章 臨床と応用心理学:Topic6〕,
応用心理学ハンドブック編集委員会(編) 応用心理学ハンドブック,pp.330-331,
東京・福村出版,2022年9月30日発行(全828 頁)
- ナラティブ・アプローチは、White,M. & Epston,DによるNarrative Means to Therapeutic Ends(邦題「物語としての家族」)が1990年に刊行され、主に家族療法や心理療法を効率的にかつ短期に実践しようとしている専門職やセラピストに注目されたことで心理療法やその関連分野に広く知れ渡った。
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ナラティブ・アプローチの基本原理は、心理支援を求めてきたクライエントが有する知識と技術や技能がセラピストとクライエントによる協働での実践を形作っていくことである。ナラティブ・アプローチは、個人だけでなく家族、集団や地域での実践をも包含した実践を可能にしており、セラピストはクライエントや対象者(集団)に敬意を払って非難をしないように関わることを旨としている。セラピストは、心理支援の対象となるクライエントをその人の人生における専門家と見なしている。セラピストは、その問題自身が「問題」であるとした上で、「問題」から受ける影響を減らすのに有益な技術や技能や能力、信念や価値観や幅広い能力をクライエントが備えていると考えて対応しようとする。
- 本論では「問題の外在化」の解説に加えて、ナラティブ・アプローチ研究動向を紹介し、課題と展望について論じた。