長谷川明弘
社交不安障害を疑う大学院生に臨床動作法を適用した症例
- MMPI を実施した3 時点の推移と効果測定としての活用-〔2症例呈示編 症例⑨〕,
野呂浩史・荒川和歌子(編) 日本臨床MMPI研究会監修 2022
臨床現場で活かす! よくわかるMMPIハンドブック[臨床編],pp.225-250,
東京・金剛出版.2022年2月20日発行(全255 頁)
編者(掲載順):野呂浩史・荒川和歌子
執筆者一覧(50音順):青木佐奈枝、岩井圭司、岡村由美子、木村剛士、工藤睦美、七尾美絵、野村れいか、萩原直樹、長谷川明弘、山田美紗子
▶社交不安障害を疑う症例に対して、半年に満たない期間であるものの臨床動作法を適用して著効を確認できました。事例の面接展開において心理療法の効果測定をすることにMMPIの実施とフィードバックが大変有効でした。
▶面接開始時に事例が著しい対人不安や強い緊張を持っていると面接とMMPIから見立てられました。対人不安の特性が高い場合、人前での注意の方向が自己の内部に向かうことを指す自己注目傾向が強まっており、「今、ここ」での対人場面での関わりに注意が向かなくなると考えられました。MMPIでは第6、7、0軸がこれらの特性となる「自己注目スタイル」に関連すると考えられます。
▶本事例の「自己注目スタイル」が「1)他者による状態評価の推測から、2)自己への注意集中」と2つの過程であると考えられましたが、心理療法による面接を経て「1)自己の状態確認、2)他者の状態評価、3)自己の状態評価」と3つの過程に変容しました。つまり面接を通じてClに注意の起点の変容が生じたと考えられました。注意の起点は、3回実施したMMPIの結果から、自己注目スタイルが著しく変容したことが確認できました。
▶事例が臨床動作法による面接を通して自己変容を自覚し、その変容を敏感に反映しているMMPIの結果をプロフィール図から視覚的に状態を掴んで、結果のフィードバックを経て日常生活での心構えが前向きになり、変化を自覚した症例がさらに積極的に受検して状態を把握していこうとする意欲が高まって結果的に3回の受検をしたと考えられました。
▶備考:本事例は下記の学会口頭発表を再構成したものである。
長谷川明弘 2010 他者評価を気にしすぎて「力」が発揮できない対人不安の強い学生への臨床動作法の適用-注意起点の移動によって体験様式の変化が生じた事例-
日本臨床動作学会第18回学術大会プログラム・抄録集,pp.24-25:9月18日,東京・跡見学園女子大学.