長谷川明弘 (2010)
ブリーフセラピーの中の「哲学」:石丸論文へのコメント,
2010,心理臨床事例研究(愛媛大学心理教育相談室紀要),pp9-10:愛媛大学教育学部附属教育実践総合センター心理教育相談室
2010年3月31日
▶概要:哲学のない科学や方法の適用は、その使用者の独りよがりになりやすく、倫理面を含め危険を伴いやすいでしょう。それ故に、カウンセリングや心理療法といった心理学的介入の技法を修得する場合は、技法とそれが成立するまでの過程や背景にある人間観、といった哲学もしくは態度という土台を踏まえて、やっと適切でかつ妥当と思われる専門活動が可能となります。 認知行動療法は、教える側も学ぶ側も共に「技法」という形が伝達されて各々に「教えた」「理解した」という満足感が伴っているため注目されているようです。技法を通した知識伝達学習スタイルともいえるでしょう。一方、ブリーフセラピーは、技法がいくつか用意されているものの認知行動療法と比べて技巧性が大きな特徴です。ブリーフセラピーの修得過程は、試行錯誤体験創造学習スタイルと呼べそうです。私たちは、技法を適用する中で、試行錯誤を繰り返して創造的な体験をしながら背後にある哲学をも修得していく必要があります。 ブリーフセラピーで用いられる多くの質問技法は、前提や含意を伴っています。たとえば、ミラクル・クエスチョンでは解決像が質問の前提にあり、それにクライエントが答える中でいくつもの解決像が示され、その内容が広がり、その結果、「解決」が生まれたり、「既にあった解決」と結びつくことになります。 コメントは、「問題探し」という前提を含んでいます。ソリューションフォーカストアプローチという肯定面に注目することを前提とする文脈には沿わない側面がありました。今回はこのように困難な課題を提示していただき、それに応えてみたつもりです。いかがでしたか?・・・・末筆になりましたが、石丸さんの今後のご活躍を期待しております。
▶キーワード:技法を学ぶ背後にあるもの-図と地-、知識伝達学習スタイルと試行錯誤体験創造学習スタイル、面接者は何の専門家?