臨床心理学を学ぶ(統計法と研究法の基礎知識)


 

長谷川明弘

臨床心理学を学ぶ「その4」:心理学における研究法と統計法-主に基礎知識を整理する-,

2019, 東洋英和女学院大学心理相談室紀要22巻, pp.72-85.

2019年3月31日

 

▶心理学における研究法(統計法含む)の中でも基本的な事項を中心にまとめることを目的とした。前半は、心理学における研究法を紹介ならびに解説し、後半では心理統計や心理測定法の基礎知識を整理した。

 

▶心理学の研究法としては、面接法、観察法、質問紙法、実験計画法、検査法、事例研究法が挙げられる。臨床心理学では、特に面接法と検査法そして質問紙法に加えて、事例研究法に習熟しておくことが求められる。

 

▶統計学(statistics)は、人間が現象に関心を持つ中で始まって数学を用いて法則性を整理していく試みから学際的に体系化されたものである。

 

▶記述統計は、データの持つ種々の特性を少数値の指標で表現するための手法である。推測統計は、限られた標本の背後にある母集団の特性を推論して結論を得ようとする手法である。多変量解析(multivariate analysis)は、一つの対象が多くの互いに関連する特性を持つときに、特性間の関連構造を考慮しながら対象の特性を簡潔に記述・説明するための手法である。尺度構成は、人間を物差し(測定手段)として対象を順序づけたり、配置したりするための尺度を作り出す方法である。

 

記述統計では、代表値、散布度、確率分布、適合度検定、2変数の関係の種類と解析・分析手法、二つ変数の関係を検討する手法の概説をした。

推測統計では、統計的検定、帰無仮説と対立仮説、有意水準と有意確率、第1種の過誤と第2種の過誤、検定力、回帰分析、クロス集計表とカイ二乗検定、自由度、t検定、主成分分析と因子分析、クラスター分析、判別分析とコンジョイント分析、共分散構造分析もしくは構造方程式モデリング、実験計画法と分散分析の概説をした。

 

▶論文の締めくくりで、専門職やその養成課程にいる学生がさらに理解と実践を進めていく上でフリーソフトのRや定評がある解析ソフトのSPSSといった専門書や参考書を紹介した。またメタ分析に加えて、グラウンデッド・セオリーやKJ法、複線径路等至性アプローチ(TEA)、PAC分析、テキストマイニングといった質的研究法や量的研究法が混在した研究手法の特徴を述べた。

 

▶キーワード:研究法、心理統計学、記述統計(descriptive statistics)、推測統計(inferential statistics)、発達段階(developmental stage)、グラウンデッド・セオリー(Grounded Theory)、複線径路等至性アプローチ(Trajectory Equifinality Approach:TEA)、PAC分析(Personal Attitude Construct)

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心理学における研究法と統計法-主に基礎知識を整理する-,
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