長谷川明弘 (2012)
統合的な立場からブリーフセラピーを再定義する-試案・私案・思案-,
ブリーフセラピーネットワーカー 第15号,pp18-24:ブリーフセラピーネットワークジャパン
2012年4月15日
- 概要:本論は、ブリーフセラピーとブリーフサイコセラピーを国内外で牽引してきた宮田敬一氏を追悼するブリーフセラピー・ネットワーク・ジャパンにおけるシンポジウムでの話題提供が元となっている。
- 宮田氏の論文を概観した上で統合的な立場から見たブリーフセラピーの定義を示した。
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統合的な立場から見たブリーフセラピーは「ブリーフセラピーを、効果的で効率的なアプローチを希求し続ける心理療法の実証研究や実践活動を参考にしながら、相互作用論に立脚して問題解決のためにクライエントとセラピストの協働によって出来るだけ短期間に変化をもたらそうとする心理療法であると定義する。なおエリクソン(Erickson,M.H.)による心理療法の臨床実践とサイバネティックスの理論を精神医学に導入したベイトソン(Bateson,G.)の認識論が心理療法モデルの中核に位置づけられる(de
Shazer,1985;宮田,1994,1999)。」と定義した。
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この定義のポイントは、実証に基づいた実践活動を行う必要性の意義を考慮し、これを定義にも示した。今回の定義には、これまで提唱されてきたさまざまな心理療法のアプローチ・モデルを含む統合的なものと位置づけて、様々な、個人療法や家族療法や集団療法をも含む。
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もう1点押さえておきたいのは、今回定義を示した「ブリーフセラピー」は、一人の創始者が始めた心理療法ではない。様々な臨床家、実践家が個々に心理療法やアプローチ・モデルを理解して消化しては実践し、それらが相互に影響し合って心理療法になっていく実態を含んでいる。
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しかしながら、ブリーフセラピーと呼ぶ以上、外せないのが、可能な限り短期間での変化を目指そうとすることと相互作用論である。
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意見が分かれると思われるのは、催眠でのトランスの捉え方になる。つまり自然なトランスとして「あちらこちらに存在する」と捉えるのか、トランスが状態として「存在する」と捉えるのかといった点である。
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また動作法やフォーカシングといった身体や「からだ」、体感覚の取り上げ方をどうするかも重要である。
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さらに、これまでブリーフセラピーとブリーフサイコセラピーの定義が国内において区別されていたものが、今回の定義では不明確になってしまうのではないかという懸念があることも最後につけ加えておきたい。